2012年4月21日土曜日
ドクター江部の糖尿病徒然日記 人体のエネルギーシステム
マラソンの季節ですね。
今回は以前ブログで書いた記事をもとに、運動とエネルギー源について考えてみます。
ATP(アデノシン三リン酸)は、骨格筋の収縮に利用される唯一のエネルギー源です。
このATPを供給するために、人体には、いろいろなシステムがあります。
まずは、最高強度の運動(非常時の運動)です。
<最高強度の運動>
最高強度の無酸素運動とは、例えば100m競争などですね。
最高強度の運動の時は、即エネルギ−源が必要なので、筋肉細胞はまず自前で貯蔵していたATPを使います。
しかし、このATPは1〜2秒でなくなるので、直後にクレアチンリン酸を利用してADP(ATPの分解産物)からATPを再合成します。
このクレアチンリン酸の生み出すATPは、数秒で減少し、10 秒で半減します。
その代わりに、グリコーゲン分解と解糖からのATP供給が5秒で最大となり、20秒くらい持続します。
これらは、ほとんど全て嫌気的エネルギーで、供給速度が速いです。
最高強度の運動には、通常の脂質や糖質の酸化的リン酸化による好気的エネルギー供給では、速度が遅くて間にあわないので、非常用の嫌気的システムがあるのでしょう。
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100m競争だと、嫌気的代謝が90%で好気的代謝が10%です。
なお、最高強度の運動というのは人類にとって、歴史的には非常時(逃走・闘争など)の時の十数秒間だけだったと思います。
次にマラソンなど長時間の運動の考察です。
<長時間の運動>
通常「長時間の運動」というのは、30〜180分間は維持できる運動強度を示しています。
有酸素運動の持久力トレーニングを行えば、筋肉細胞のミトコンドリア密度が高まり、ミトコンドリアの近くにある脂肪滴が増えることがわかっています。
長時間の運動後、この筋肉内の脂肪滴が大幅に減っていることが確認されています。米国でアスリートの運動の前後で筋生検をしてそ� �を確かめています。
一流スポーツアスリートは、体脂肪率は一般人より低いですが、筋肉細胞中の脂肪滴は多く、また血液中の脂肪酸の利用能力も高まっており、これが鍛えた効果です。
それから、糖質制限食(高脂肪食)を実践中は、常に脂肪が分解され血中の脂肪酸・ケトン体が高値であり、筋肉細胞は血中からの脂肪酸も利用し易くなっています。
従って、筋肉細胞は、血液からも自身の内部からも上手に脂肪酸を利用することにより、筋肉中のグリコーゲンを節約することができるのです。
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長時間の運動においても、筋肉中のグリコーゲンが節約できれば、持久力・スタミナがつきます。
すなわち糖質制限食実践者中の人は、持久力とスタミナが良い方に向上します。
逆に筋肉中のグリコーゲンが一定以下に減少・枯渇したら、筋肉は疲労のため動かなくなります。
なお長時間の運動のごく初期の1〜2分は、高強度の運動と同様に嫌気的エネルギーが利用されますが、その後脂肪と糖質の酸化的リン酸化による、好気的エネルギー供給に代わります。
即ち、高強度の運動時と同様、筋肉細胞はまず自前で貯蔵していたATPを使います。
直後にクレアチンリン酸を利用してADPからATPを再合成します。
その後、グリコーゲ� �分解と解糖からのATP供給が始まり、20秒くらい持続します。
これらは全て嫌気的エネルギーで、供給速度が速いです。
<運動強度と嫌気的代謝・好気的代謝>
陸上競技を例にすると
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100m競争だと、嫌気的代謝が90%で好気的代謝が10%
400m競争だと、嫌気的代謝が70%で好気的代謝が30%、
800m競争だと、嫌気的代謝が40%で好気的代謝が60%、
1500mは、それぞれ20%と80%
10000mは、それぞれ3%と97%
42.195km(マラソン)は、それぞれ1%と99%
となります。
好気的代謝には、「脂肪酸−ケトン体システム」と「グリコーゲン−ブドウ糖システム」があります。
脂肪酸−ケトン体のシステムより、ブドウ糖システムのほうが速くエネルギー(ATP)の供給ができるので、強度が高い運動のときほど、筋肉は、ブドウ糖を使う率が増えていきます。
中長距離の場合、脂肪酸システムを上手に利用して、筋肉中のグリコーゲンを温存し、ラストスパートの時に一気にブドウ糖を燃やして高強度運動を行うのが理想的ですね。
そして、長時間の運動(30〜180分間は維持できる運動強度)であれば、筋肉は脂肪酸−ケトン体のシステムを中心に利用します。
一流スポーツアスリートは、筋肉細胞中� �脂肪滴が多く、また血液中の脂肪酸の利用能力も高まっています。
勿論、筋肉中のグリコーゲン−ブドウ糖のシステムを全く利用しないということではありませんし、血液中のブドウ糖も利用します。
あくまでも脂肪とブドウ糖のどちらが主エネルギー源か比率の問題です。
一般には強度の高い運動ほど、エネルギー供給速度の速いグリコーゲン−ブドウ糖システムの利用比率が増します。
この時、鍛えられたアスリートほど、ある程度の強度の運動でも、脂肪酸−ケトン体システムを上手に使いこなしますので、筋肉中のグリコーゲンを最後まで節約できます。
そして、ラストスパートで高強度の運動の時に、一気にグリコーゲン−ブドウ糖システムを全開していきます。
江部康二
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